フォルジュエリーからのご挨拶
言葉の輪郭
言葉ひとつで、同じ出来事の意味が変わる。
デザインも、商いも、人間関係も、結局はそこに尽きる気がしている。だからこのブログは、僕が見てきたもの、作ってきたもの、迷ってきたものを、できるだけ「届く形」に整えて残す場所にする。
ルーツ
僕は古都鎌倉の小町に根を下ろしてきた家系に生まれ、国際色豊かな港町横浜で育った。墓所は鎌倉の本覚寺にあり、そこには江戸時代初期の寛文五年(1665年)が刻まれた墓碑も残っている。その事実を知ったのは今年の6月だった。時間の重みを、文字として目で見る体験は案外大きい。
さらに同じ墓所内には、かの有名な刀匠、正宗の墓もある。歴史が好きな人には有名な話かもしれないが、僕にとっては「過去は物語じゃなく、場所として残るんだな。」と実感させる存在だ。
家紋は橘紋である。橘は古くから繁栄や長寿の象徴として語られてきた。僕が「橘」というモチーフに何度も戻ってしまうのは、家系の記号というだけじゃなく、時間を超えて受け継がれる強さを感じるからかもしれない。
空気感と仕事の芯
古いものと新しいものが同居する空気の中にいるのが、昔から当たり前だった。
その感覚は、今も仕事の芯になっている。伝統と現代、感性と実務、趣味とビジネス。どちらかに寄せすぎると崩れる。だから真ん中に橋を架ける。その作業が好きだ。
絵とデザイン
若い頃は絵を描いていた。自分の手で世界を切り取って、色にして、構図にして、意味を与える。あの時間が、今の「審美眼」の基礎になっている。
それと並行して、デザインの現場にも身を置いてきた。言葉と写真とレイアウトで「価値の見え方」を整える仕事を続けながら、25歳で赤坂見附に、32歳で日本橋にデザイン事務所を開設した。現場で何度も思ったのは、良いものは「良い」だけじゃ届かない、ということだ。美しさは、伝わる形に編集して初めて人に渡る。
数字だけでも、感性だけでも、人は長く動かない。「物語」と「構造」をつなぐこと。理念があり、実装があり、継続の仕組みがある。その全部が噛み合ったとき、ブランドは強くなる。
ふとした出会い
そんな仕事を続ける日々に、ふとした出会いがあった。
ある日、手に取った一点から感じたのは、その素材の美しさはもちろんのこと、時が積み重なった気配だった。誰かが選び、使い、手放し、また次の誰かへと渡っていく。その履歴が、ただのモノを「物語」に変えている。
その感覚に惹かれたのだろう。気づけば僕の関心は「日々の装いに息づく美」へと向かい、とりわけ時の重なりを帯びたリユースジュエリーへと深まっていった。
このブログで書くこと
このブログでは、FoLという視点を軸に書いていく。
FoLは「Finds of Luxury」を意味する。上質との出会いを、丁寧に拾い上げていく。これはその姿勢を言葉にしたものだ。
中心にはジュエリーの話を置く。とりわけリユースの魅力(素材そのものの美しさに加え、時の気配や履歴が生む奥行き)を、できるだけ具体に書いていく。価格の理由、状態の見立て、良いものを見分ける視点。そういう「選ぶための情報」を、曖昧にせず言葉にする。
同時に、言葉や見せ方の話も扱う。価値の輪郭をどう整えるか、何を残し何を削るか。上質が「伝わる形」になるまでの編集も、この場所に置いていく。
このブログの軸
上質との出会いを丁寧に。
ここで言う「丁寧に」は、出会った瞬間のときめきも大事に、その背景や理由まで含めて、手元に残る価値にしていくということだ。上質とは、派手さではなく、触れたあとに静かに確かさが残るものだと思っている。
口にする言葉、手に取るアイテム、会う人、使う時間。日々の選択の積み重ねが、そのまま出会いの質になっていく。だから、急がない。煽らない。比べて勝たせない。自分の目で見て、自分の言葉で確かめて、納得できる形に整えていく。
願わくはこの場所が、誰かの選択の精度を上げるヒントになればいい。そして僕自身の思考も、ここで研ぎ直していこうと思う。